成功率を論じる上では、中堅中小企業のM&Aにおける成功の定義が必要になろうかと思う。他のコーナーでご説明したが、中堅中小企業のM&Aにおける成功とは、売り手・買い手から見た目線によってその定義は大きく異なると思う。
一方、一般的に、買収後大きなトラブルなく、従来通り自然体でに買い手、売り手のオペレーションが回っているという状態は、広く成功と言えるかもしれない。
また、買い手目線で見たとき、当初予定の投資回収期間で投資回収を完了すれば成功と言えるかもしれないし、売り手企業の目線では、相乗効果を発揮し、売り手企業も、グループ化により、従来以上に競争力を備え、従業員の処遇も向上したという事であれば成功と呼べるかもしれない。
何が言いたいのかというと、M&Aにおける成功・失敗は、ステークホルダーによって見方が異なる可能性が高いという事である。
一方、失敗というと、買収後両社のPMIがうまくいかず、譲渡側企業が清算に追いやられるといった状態は明確に失敗と言えるかもしれない。
筆者が、アドバイザーを手がけてきた経験から申し上げると、上記で言うところの失敗と言われる事案は、50件あって1件程度の感覚である。すなわち、この尺度で考えるのであれば大半の中堅中小企業のM&Aは、広い意味では成功していると言っても良いかもしれない。
バイサイドから見て重要な事は、M&Aの目的を明確化し、成功と呼ばれる水準を定量的に定義し、その達成に向けしっかりと戦略を練り、行動計画に落とし込み、PDCAを回していく事であると考える。
また、売り手・買い手の組み合わせの妙は成功失敗を占う上で非常に重要な要素と言えるので、その点もあわせて注意して取引を進めたいものである。