私は、中堅中小企業の国内案件のアドバイザリーに特化しておりクロスボーダーの事案を扱った事がない為、具体的なディール経験に基づく見解を述べる事はできません。しかし、日本企業が海外企業買収を検討する理由はいくつか考えられると思います。
例えば、世界的に再編が進む業種があります。製薬業界などは良い例で、新規薬品のパイプラインの豊富さが今後の生き残りを左右するという世界であり、競争相手は国内ではなく完全に世界規模になっています。
国内企業が中長期的に生き残って行くためには、大手企業の傘下に入るか、あるいは自ら買収し規模を拡大して行くか、この二つしかありません。
国内最大手の武田薬品工業クラスでも世界ランキングでは10位以内にも入れていません。グローバル競争が進む業界は、競争に生き残る為に買収を検討する事があるという事となります。武田薬品工業クラスでも大手の傘下になるという選択肢も生き残りの戦略として検討しているのでは無いかと私は思います。
また、かなりスケールの大きい話をしましたが、最近では中堅中小企業においても海外案件の買収事例が着実に増加しています。
特に、シンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナム、インドネシア、タイ、などの地域での事例が増加していますが、この分野においては、買収後一定期間に投資回収できるという事を成功と定義するのであれば今後5年〜10年でそのデータが整ってくるのだろうと思います。
私が知る限りにおいては、中堅中小企業の買収は、成功率が1割〜2割などという事は無く、保守的に見て7割は回収期間の差こそあれ投資回収に成功している印象であり、これは海外においてもそこまで差は出ないのでは無いかと考えております。
中堅中小企業においては、買収案件の失敗が経営の屋台骨を揺るがす事もありますから、まず1割とか2割の成功確率のもとでは、積極的に買収はしないと思うし、実際の成功率はもっと高くなってくるのでは無いかと思います。