売り手社長はメンヘラという事で、ちょっと過激な題目にしたが、強ち間違っていないかもしれない。
というのは、長年手塩にかけて育ててきた会社を第三者へ譲り渡すという行為は、古い表現であるが、娘を嫁に出すようなそんな感情を、売り手経営絵者に生ぜしめるのでは無いだろうか。
事実として、順調にトップ面談を終了し、希望の価格で基本合意契約を締結し、買収監査を実施した後に、最終契約書締結のやりとりをしている間に、精神的に不安定になる経営者は少なく無い。
特に、夫婦で経営の舵取りをやってこられた経営者においては、どちらかが不安定な精神状況に陥り、それが波及して夫婦で鬱の様な状態になった事案を取り扱った事もある。
譲渡にあたっては「本当にこれでいいのだろうか?もっといい先があるのではないか?」といった事を大半の経営者は頭に思い浮かべ、譲渡日までその思案を繰り返しているのではないだろうかと私は実務経験から思う。
売り手経営者が迷った時、私は、経営者の話をひたすら聞く事に徹する。女性の悩みをひたすら聞くかの如く、ひたすら耳を傾ける。散々経営者がその思いをぶちまけた後に、再度、そもそもなぜ譲渡を検討したのかという原点に立ち返って対話を行う。
この根本的な譲渡理由と、そのディール実行のベクトルが合っているならばそのディールはそういった悩みを乗り越えて成立する可能性は高い(ノンロジックでブレイクすることも稀にある)。
故に、セイルサイドアドバイザリーにおいては、譲渡理由の確認・把握というのは、実はすごく重要なタスクなのである。