第38話は、実務におけるリアルなやりとりが如実に織り込まれた作品となっている。
見所は大きく分けて3点と考える。
1点目が、売り手の譲渡バイアス。M&Aにおいて、売り手と買い手は違う立場から物事を考えており取り引きにあたっては相互の利益が相反する。一般的に売り手は、フェアバリューと言われる価格よりも高めに自社を評価する傾向にある。今回の漫画においても、買収監査後の買い手からの値下げ要請示唆に対して、売り手としては一切譲る姿勢は見せなかった。
2点目が、アドバイザーのネゴシエーションのリアル。
詰まる所、M&Aアドバイザリーはあらゆる場面で「交渉」の連続である。買い手のアドバイザーあるいは、買い手に対して売り手の主張を強く通す為には、その場における交渉力の優劣を適切に判断する力が求められる。今回の場合、買い手が売り手の取引先アカウントの取得を強く望んでいたという事実を背景に、マックスから強気の交渉を実施し、売り手の条件を飲ませた形となる。
3つ目が、潮時を知るという部分。
深田社長から最後の最後までマックスにネゴが入る場面がある。アドバイザーは交渉において潮時を相手に知らせる必要があるし、相手もそれを知る必要がある。こういうドロドロとしたやりとりを通じて取引というのは最終契約へとまとまっていくのである。