中堅中小企業の従業員というのはおもしろいもので、非常に不思議なものなのだが、経営者がしっかりしていればしっかりしているし、経営者が気を抜いているといい加減な従業員が多くなる。
この相関関係、因果関係は未だに不明だが、多くの会社を見てきた私の経験からはこの法則は一定レベルで当たっており、裏を返すと従業員がしっかりしている会社の経営者は、素晴らしい経営者が多いという事も言える。
過去、M&Aを通じて非常に悲しい出来事に遭遇した事がある。
それを取り上げたのが今回の第27話であるが、オーナー経営者としては、その従業員を右も左もわからない時から拾い、そして育ててきたという自負を持っており、その従業員を信頼しきっているという状況であった。
一方、当該従業員は業界の横の繋がりからの側面調査によると、どうも社内で不正を働いているという情報が耳に入ってきた。そして、従業員開示に際しては、最初は、「自分は社長に世話になったので社長に迷惑はかけない」と言っていたにも関わらず、従業員を引き連れて独立するという行動に出たのだった。
幸い、買い手経営者も生き馬の目を抜く世界で、百戦錬磨の猛者であった為、起こりうる事象を事前に把握しており、事業継続に関しては影響を与える事は無かったが、それにしても人は裏切るものだという事を目の当たりにした事案であった。