M&Aとは、経営戦略の一環である、あるいは事業承継問題を解決する最良のツールである、といった形で語られ、その美しい部分ばかりがフォーカスされる傾向にあるが、実際の実務の現場は、人間の欲望が渦巻く、なんとも言えないドロドロした世界である。
特に、株価の調整という点は、売り手経営者、買い手経営者共にもっともシビアに交渉が入るポイントの一つといっても過言ではないだろう。
貸借対照表を実態ベースで俯瞰してみた時に、全体の資産項目に占める土地の割合が大きい会社を見ることがしばしばある。
こういったケースにおいては、当然事業の収益性というものも営業権算定の上では重要な要素となるのであるが、土地の時価評価に対する売り手・買い手の見解相違により調整が困難となるケースは多く存在する。
土地をめぐっては、色々な論点が存在する。一つ例をあげるのであれば、土地に含み益があり、その分を株価にオンする場合はその利益に対する税効果分を純資産から控除する必要があろう。
今回の漫画では、土地価格の認識にズレがあった為、買い手が土地取得に拘らないという前提で、譲渡対価より買い手の算定価格で土地を買い取り、情報の非対称性を埋めるという調整を行なっている。一般的に土地の取得は事業継続上必須のケースが多く、こういった事案は稀かもしれないが、頭に入れておいて欲しい。