M&Aとは

ABOUT M&A

M&A(エムアンドエー)とは、ある企業が合併(merger)や買収(acquisition)により他の企業と統合して一体になることです。合併・吸収、子会社化、事業売却・譲渡などを指し、広義には合弁(共同出資)や資本提携(マイナー出資)、会社分割などを含みます。

M&Aとは

中堅・中小企業とのM&Aに関する「基本的なこと」と「全般的なこと」と「重要なこと」を、すべてこの1本の記事で解説します。
M&Aとは「合併(Mergers)と買収(Acquisitions)」のことです。
ニュースでは大企業の合併・買収ばかりが話題になりますが、最近は、中堅中小企業の経営者も、後継者問題や事業拡大といった喫緊の課題を解決する手法としてM&Aを活用しています。
経営者の今の悩みは、M&Aで解決できるかもしれません。

「なんのため」のM&Aか

M&Aの仕組みや枠組みを解説する前に、中堅・中小企業の経営者がM&Aを実施する目的について考えてみましょう。
M&Aを実施した経営者は「なんのため」に合併したり買収したりしているのでしょうか。

事業承継のためのM&A

昨今のM&A事情でも書いたとおり、現在、日本企業の大半を占める中小企業は深刻な後継者不足が指摘されています。
中小企業庁によると、2018年の段階で70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は245万人いて、そのうち約半数の127万人が後継者未定です(※)。
※https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/nentouShokan/2018Year.htm

経営者が高齢になり、子供に継がせることもできず、社内にも適任者がいない場合、廃業することになりますが、それはさまざまな意味で「よいこと」とはいえません。

ひとつの企業がなくなれば、顧客の生活や取引先の事業に影響します。従業員たちは職を失います。さらに、企業がこれまで培ってきた技術やノウハウが消えてなくなれば、日本経済にとっての損失になります。

事業承継のためのM&A

また、中小企業庁によると、現在のペースで中小企業・小規模事業者の廃業が増え続ければ、2025年までに650万人の雇用とGDP22兆円が失われます。

では、経営者の子供が継いだり、社内に後継者の適任者がいたりすればよいのかというと、一概にそうとはいえません。それは「継がす不幸」問題があるからです。中小企業の場合、「その経営者」だから事業が継続できていることがあります。その場合、いくら社内に技術やノウハウがあっても、次の経営者がうまく会社を運営できるとは限りません。継がせた直後に廃業に追い込まれた場合、「継がせなかったほうがよかった」ことになります。これが、継がす不幸です。

そのようなときM&Aを利用すれば、事業継承をしながら、継がす不幸を生まずに済むかもしれません。

事業再生のためのM&A

企業の事業内容に問題がなくても、経営資源が不足しているために経営が傾いたり事業拡大できなかったりすることがあります。
例えば、ある中小企業が、革新的な技術で業界をリードしていたとします。ところが、大企業がその事業に参入してきて、中小企業の競争力が低下したとします。このとき、中小企業が大型投資に踏み切れば再びシェアを回復できるかもしれませんが、それだけの「体力」がない場合、大企業に追い抜かれてしまうでしょう。
このような中小企業がM&Aを使えば、豊富な経営資源を使って事業を発展させられるかもしれません。

事業再生のためのM&A

「事業の選択と集中」のためのM&A

「事業の選択と集中」は、大企業でも中小企業でも必要不可欠な経営判断になっていますが、これを苦手にする中小企業や中堅企業の経営者は少なくありません。
なぜなら「選択」とは、集中する事業を決めると同時に、集中しない事業を決めることでもあるからです。中小企業では、経営者の義理や人情や想いだけで、特定の事業を守ってしまうことがあります。それでは正しい「選択と集中」はできません。

大企業は、かなりドラスティックに事業の選択と集中を進めています。創業時の事業や、かつてのコア事業も、発展が見込めなければ躊躇なくM&Aで切り離しています。
それは、選択と集中を進めないと、大企業ですら生き残れない時代だからです。
中小企業と中堅企業の経営者も、「傷口が広がる前」にM&Aで事業の選択と集中を図ったほうがよいでしょう。

「事業の選択と集中」のためのM&A

M&Aの種類を知る

M&Aの種類を知る

M&Aにはさまざまな種類や枠組みがあります。多くの種類が存在するということは、経営者にとっては、それだけ選択肢が広がることを意味しています。
M&Aを検討するときは、M&Aをする目的と一緒に「どの種類のM&Aを使うか」も考えなければなりません。
そしてM&Aの種類を知ると「そういうこともできるのか」という気付きを得ることができます。
この章では「買収」と「合併」と「分割」の違いについて紹介します。

買収と合併と分割の違い

買収は、譲受企業(買い手企業)が譲渡企業(売り手企業)を支配する目的で、議決権の過半数以上を買い取ることです。
合併は、複数の会社が法的にひとつになることです。
分割は、既存の会社を、既存の会社と別の会社にわけることです。
この3つはさらに、次のように細分化されます。

 買収株式取得
事業譲渡
合併吸収合併
新設合併
分割新設合併
吸収合併

それぞれ詳しくみていきましょう。

買収

買収は大きく、株式取得と事業譲渡の2つにわかれます。

買収株式取得
事業譲渡

株式譲渡とは、買い手企業が売り手企業の株式を購入することによって、経営権を移転させる手法です。買い手企業が支配権を獲得するには、議決権の過半数の株式が必要です。

事業譲渡は、買い手企業が、売り手企業の一部の事業を購入する手法です。
例えば、自動車部品を製造している企業が、自動車部品と自転車部品をつくっている企業から自動車部品事業だけを買い取るとき、事業譲渡になります。
買い手企業は自社の事業を補強でき、売り手企業は不採算部門を切り離すことができます。

合併

合併は大きく、吸収合併と新設合併の2つにわかれます。

合併吸収合併
新設合併

吸収合併は、買い手企業が売り手企業の権利義務をすべて受け継ぎ、売り手企業の法人格を消滅させる手法です。
吸収合併をすると「売り手企業がなくなり、買い手企業が存続」します。

一方で新設合併は「買い手企業も売り手企業もなくなります」。
新設合併では、例えば2社が新規に会社を設立して、その2社の権利義務を新設会社に移します。元の2社の法人格は消滅します。

分割

分割は大きく、新設分割と吸収分割の2つにわかれます。

分割新設合併
吸収合併

新設分割でも吸収分割でも、会社分割を行なう点は同じです。
会社分割とは、ある会社が、自社の特定の事業の権利義務を「他の会社」に承継させる手法です。

この「他の会社」が、新しく設立した会社の場合、新設分割といいます。
この「他の会社」が、既存の会社の場合、吸収分割といいます。

中小企業のM&Aが「求められる背景」「進む背景」

中小企業のM&Aが「求められる背景」「進む背景」

中小企業庁によると、2017年の中小企業のM&A件数は526件で、これは2012年の155件の3倍超になっています。
中小企業や中堅企業のM&Aが「求められる背景」と「進む背景」をみていきましょう。

よりよい手法だから求められている

中小企業や中堅企業の経営者がM&Aに注目するのは、それがよりよい手法だからです。
売り手企業の経営者からすると、手塩にかけて育ててきた自分の会社を売ることは「嫌なこと」のはずです。しかし、売らずに廃業に追い込まれることは「もっと嫌なこと」のはずです。
「嫌なこと」と「もっと嫌なこと」を比較したとき、前者を選ぶことは、よりよい選択といえます。
そして現代の日本経済は、中小企業や中堅企業の経営者に、「嫌なこと」か「もっと嫌なこと」かの選択を迫っています。

今はかつてより、中小企業が中小企業のまま生き残るのが難しくなっています。そのため、創業した企業が中小企業のまま、創業者兼経営者が高齢になったとき、「子供に引継がせても苦労させるだけ」と考えるようになってしまいます。
しかも中小企業では、優秀な経営者を育成する余裕がないことも少なくありません。

またビジネス形態の激変も、事業継承を難しくしています。中小企業であっても、事業のIT化や、ネット通販などのEC化が避けられない状況になっています。
現在の経営者が「あと5年だけ」事業を続けるのであれば、IT化もEC化もしないで済むかもしれませんが、子供や社内人材に経営を任せるのであれば「次の30年」のことを考えなければなりません。それには大型投資が必要になり、そこまでのリスクを取れるのかという問題に直面します。

さらに、金融機関の融資基準が日に日に厳しくなっています。特に地方銀行には再編の波が押し寄せていて、財務が健全でないと再編時に不利になってしまいます。それで中小企業への貸し出しにブレーキがかかってしまうのです。

廃業という「もっと嫌なこと」が起きやすい状況が避けられない以上、中小企業にとって廃業を回避できるM&Aは「よりよい手法」になるはずです。

企業の「名」と「実」のうち、M&Aを使えば確実に「実」を残すことができます。そしてM&Aを上手に使えば「名実」ともに存続させることができるかもしれません。

売りやすくなってM&Aが進んだ

中小企業のM&Aが最近になって増えている、ということは、最近まで増えていなかったことでもあります。なぜ以前はM&Aは、中小企業ではそれほど一般的ではなかったのでしょうか。

理由のひとつに、経営者の意識があるでしょう。
「子供が継がないなら廃業したほうがまし」
「他人に会社を任せたくない」
「あのライバル会社にだけは売りたくない」
「会社を売るのは恥」
こうした気持ちが経営者にあると、M&Aは始まりません。
また「会社を売っても得することはない」という先入観が経営者にあれば、M&Aはむしろ「絶対に採用しない手法」になってしまいます。

しかし、M&A事例が、中小企業や中堅企業だけでなく、零細企業やベンチャー企業にも広がったことで、「M&Aのうまみ」を理解する経営者が増えてきました。
自分で興した会社を、自身の引退と同時に売却すれば、その売却益は「退職金」代わりになります。つまりM&Aに成功すれば悠々自適な老後を送ることができるかもしれません。しかも、従業員や顧客や取引先が、よりよい環境を得る可能性も広がります。

最近は、インターネットでM&Aに着手できるようになりました。また、売買価格が数百万円という少額M&Aや、個人が会社を買うことも増えてきました。
この「手軽さ」が、事業承継に困った経営者の背中を押している面もあります。

中小企業のM&Aは、地方経済に大いに貢献しています。北海道のある市のバス会社が廃業の危機にありましたが、隣の市のバス会社にM&Aされたことで存続することができました。M&Aが「地域の足」を守ったわけです。
大手ドラッグストアは、地方の中小・中堅調剤薬局チェーンの買収に積極的です。大手による中小企業の買収が「地域の健康」を守っていることになります。

中小企業が大手に買収され、V字回復できれば、中小企業に雇用されていた従業員の給料はアップするでしょう。また、M&Aによって事業再生がかなえば、商品やサービスの価値も向上するので、顧客や取引先にもよい影響をもたらします。

M&Aは「よいこと」であるという認識が広がったことが、中小企業や中堅企業の経営者がM&Aを「求め」、M&Aを「進める」背景になっています。

「売り手」と「買い手」のメリットとデメリット

M&Aの主役は大きく、売り手側である譲渡企業と、買い手側である譲受企業の2者になります。

M&Aには、メリットとデメリットがあり、その内容は譲渡企業と譲受企業で異なります。M&Aは、膨大な労力と事務作業を要し、多くの関係者に影響を与え、莫大なコストがかかることもあります。

したがって、譲渡企業の経営者も譲受企業の経営者も、メリットがデメリットを上回ると判断したときに、M&Aを検討・実施することになります。
売り手企業と買い手企業のそれぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。

「売り手」と「買い手」のメリットとデメリット

譲渡企業(売り手企業)のM&Aのメリット・デメリット

売り手企業がM&Aをするメリットには次のようなものがあります。

  • 会社が存続する
  • 事業が存続する
  • 技術、ノウハウ、商圏の散逸を防ぐことができる
  • 従業員、顧客、取引先に迷惑がかからない
  • 従業員、顧客、取引先の経済状況を改善できる
  • 創業者などの大株主経営者なら売却益を得ることができる
  • 経営者が個人保証から解放される
  • 不採算部門を切り離すことで経営が安定する

一方、売り手企業のデメリットには次のようなものがあります。

  • 会社が消えることがある
  • 従業員の雇用が守られないこともある
  • 大株主経営者の売却益が十分に確保できないことがある
  • 事業譲渡によって企業規模が縮小してかえって経営が不安定になることがある

デメリットは、「メリットの裏側」になっていることがわかります。売り手企業は、条件を吟味したうえでじっくり交渉しないと、メリットが小さくなり、デメリットばかりが目立つようになってしまいます。

譲受企業(買い手企業)のM&Aのメリット・デメリット

買い手企業にとってのM&Aの最大のメリットは事業の拡大と時間の節約の2つです。
例えば、業界1位の企業と2位の企業が僅差で競っていた場合、どちらかが3位企業を買収すれば、短時間で事業を拡大し盤石な業界1位企業になることができます。

ある企業が事業を拡大するには、新商品を開発したり、マーケットを拡大したり、広告宣伝を増やしたり、工場を新設したり、従業員を増やしたりしなければなりません。
それは手間もコストも時間もかかります。
M&Aをすれば、手間も時間もかかりません。コストはかかりますが、これも短時間で事業拡大することで、やはり短時間で回収できます。

M&Aにおいて、買い手企業のデメリットはあまりありません。なぜなら、M&Aでは買い手側が圧倒的に有利だからです。
しかし、「隠れ負債」については注意する必要があります。
隠れ負債では、退職給与引当金や貸倒引当金、未払費用といった簿外債務が問題になります。
また、M&Aによって、売り手企業の優秀な社員が退職してしまうリスクもあります。さらに、買収した企業の技術やノウハウが、短期で陳腐化するリスクもあります。
買い手企業の最大のデメリットは「買い手有利による油断」かもしれません。

M&Aを検討するときの注意点

M&Aを検討するときの注意点

M&Aを本格的に検討するときの注意点を紹介します。

  1. 相性はよいか
  2. 条件はよいか
  3. M&A後の視界は開けているか

この3点は、買い手企業にも売り手企業にも共通しています。ひとつずつみていきましょう。

相性はよいか

ビジネスライクに進むビジネスにこそ、人情や相性といったエモーショナルな部分が重要になることがありますが、M&Aにも同じことがいえます。

M&Aは売り手企業と買い手企業の利害が一致したときに成立しますが、利害が一致しているときでも「破談」になることがあります。逆に、利害が一致する点が少なくても、経営者どうしの相性がよい場合、「良縁」になることもあります。
例えば、売り手企業と買い手企業の双方の経営者が、M&Aの話が持ち上がる前から懇意であった場合、M&Aは進みやすくなります。これは、お互いに信頼関係が築かれているからです。

このような話があります。
A社がB社を買収することになりました。
A社のa社長は、M&Aの協議のなかで、B社の創業者であるb社長が、B社の従業員から慕われていることを知りました。a社長は、買収話をB社の従業員たちが知ったら、不安に感じるのではないか、と考えました。
そこでa社長は、b社長に、存続会社のA社の代表権のない会長に就任することを打診したのです。もちろんb氏は快諾しました。
すると、A社によるB社の買収が公表されてから、b氏は積極的に自社の社員にM&Aのメリットを伝えました。その結果、ほとんど退職者を出すことなく、M&Aが完了しました。
そしてa社長は、b氏のためにA社に会長室を設けました。代表権はないものの、b氏は引き続き「旧B社の事業」について、a社長にアドバイスを続けました。

相性を重視したM&Aは、このようなシナジーを生むことができます。

(関連URL)
漫画でわかるM&A「第10話 最後の机」

条件はよいか

相性はM&Aの重要な要件ですが、しかし「条件」が整っていなければ、そもそもM&Aはスタートしません。
そのため、売り手企業の経営者も、買い手企業の経営者も、普段の「冷徹な目」で交渉条件をチェックする必要があります。

<売り手企業の経営者の注意点>
売り手企業は、複数の買い手企業を探すことが理想です。そうすることで、よい条件を提示する競争が起き、最良の売り手を選ぶことができます。

売り手企業のM&Aのデメリットを再掲します。

  • 会社が消えることがある
  • 従業員の雇用が守られないこともある
  • 大株主経営者の売却益が十分に確保できないこともある
  • 事業譲渡によって企業規模が縮小してかえって経営が不安定になることがある

売り手企業の経営者は、これらのことが生じないように交渉を進める必要があります。譲れない内容は、書面にしたり契約書に盛り込んだりしましょう。

<買い手企業の経営者の注意点>
買い手企業の経営者は、買収先の従業員のケアと隠れ負債のチェックを怠らないようにしてください。

「企業は人なり」といいます。また、経営資源であるヒト・モノ・カネのなかで、最も重要なのは人です。
M&Aで優秀な企業や事業を買うということは、優秀な人材を買うことに他なりません。買収先の従業員が退職しないように、買い手企業の経営者は、M&Aによるメリットを丁寧に説明するようにしてください。
そして、隠れ負債については、徹底的に調査するようにしてください。隠れ負債が明らかになれば、買収額を抑えることができます。もしくは、悪質な隠れ負債があれば、そのような会社は買わないほうがよい、と判断できます。

M&A後の視界は開けているか

「M&Aの完了はゴールではなくスタートである」
この格言は、買い手企業にも売り手企業にも当てはまります。

<買い手企業のM&A後>
買い手企業は、これから購入する企業や事業が「100点満点ではない」ことを知っておく必要があります。何かしらの理由があるので、売りに出ているわけです。
そのため、買い手企業の経営者はM&Aに着手する前に、「購入する企業または事業の足りない点を埋め合わせて、さらに自社事業を拡大する」青写真を描いておく必要があります。

どれほど買い手有利なM&Aであっても、買収交渉は難航するはずです。買い手企業の経営者は、その難事業を支障なく進めながら、なおかつM&A後を検討していかなければなりません。

<売り手企業のM&A後>
売り手企業の経営者も、事業譲渡であれば、M&A後の経営戦略を考えておく必要があります。不採算事業を切り離すことで身軽になったとしても、事業規模が縮小するデメリットは小さくありません。「事業売却をしたということは、残った事業も危ないのではないか」という風評被害を受けるかもしれません。
事業売却という暗いニュースを打ち消すだけの明るいニュースを用意しておく必要があります。
例えば、事業売却した益金で大型投資に乗り出す計画があれば、その内容は早めに公表したほうがよいでしょう。

M&Aを検討する際に知っておくべき税金の話

M&Aを検討する際に知っておくべき税金の話

M&Aでは売り手側に多くの収入をもたらすことがあります。
収入が増えることで所得が発生すれば、税金が課せられます。売り手企業の経営者は、M&Aの検討に着手するときに、必ず税金について調査するようにしてください。

オーナー社長なら所得税、法人なら法人税

まずは、M&A関連の税金の概要について解説します。詳細については後段で紹介します。

売り手企業の税金で大きな問題になるのは、オーナー社長が自社を売却したときです。オーナー社長が株式譲渡で自社を売却すると、多額の所得税と住民税が課せられる可能性があります。

「元」オーナー社長は、株式を売却した翌年に確定申告をして、所得税・復興特別所得税・住民税を納めます。
また「元」オーナー社長が、株式の売却益の他に、M&Aの成功報酬を得ることもありますが、これも所得税などの課税対象になります。

売り手企業の株主が法人である場合は、法人税・法人事業税・法人住民税が課されます。企業が運転資金や投資資金をつくるために、一部の事業だけを売却することもあるでしょう。しかし、法人税などを納付することで、運転資金や投資資金は減ってしまいます。
法人税などの額を正しく予測しておかないと、事業売却後の経営戦略が大きく狂うことになります。

M&A関連の税金の概要は以上のとおりです。
それぞれの税金についてさらに詳しくみていきましょう。

「元」オーナー社長の節税

オーナー社長が株式を売却したときに課せられる税金の税率は次のとおりです。

所得税15%
復興特別所得税0.315%
個人住民税 5%
 20.315%
所得税15%
復興特別所得税0.315%
個人住民税 5%
 20.315%

これらの税金は、「株式の売却収入(株式の売却価格)」に課せられるのではく、「株式譲渡所得」に課せられます。
株式譲渡所得の額は次のように算出します。

●株式譲渡所得=株式の売却収入-(取得費+譲渡費)

確定申告の際に、取得費や譲渡費を「漏らさず」「しっかり」計上することで、節税効果が生まれます。

また、「退職金」の仕組みを使うことで、「元」オーナー社長が負担する税金を減らすこともできます。退職金のことを、役員退職慰労金と呼ぶこともありますが、同じです。
退職金に課せられる税率のほうが、株式譲渡所得に課せられる税率より低くなります。退職金への税率は、通常の所得よりも低率です。

もちろん、退職金を支払っても支払わなくても、買い手企業が支払う額は同じなので、退職金を受け取る分だけ、株式の売却収入は減ります。
数式で表すと次のようになります。

●「退職金なしの株式売却価格」=退職金+「退職金分を減額した株式売却価格」

退職金にするかどうかは、買い手企業の意向によるので、オーナー社長は交渉段階で、自身の節税対策についても協議するようにしましょう。

M&Aアドバイザーの選び方

M&Aには「多数の関係者」「多額のお金」「従業員の雇用」「法務」「税務」「財務」「会計」といった重要事項が多く関わってきます。
そこでM&Aを実施するときは、M&Aアドバイザーのサポートを受けるのが一般的です。

M&Aアドバイザーの母体はさまざまです。M&Aを専門に扱っている会社もあります。その他、銀行や証券会社や法律事務所などもM&Aアドバイザー業務を展開しています。
では経営者は、多くのM&Aアドバイザー会社のなかから、どのように最適のパートナーを選んだらよいのでしょうか。

経営者は「自社のM&Aに関する知見」を多く持っているM&Aアドバイザーを選んで下さい。

また、中堅・中小企業のM&Aと、大企業のM&Aは、ほとんど別物と考えて下さい。

M&Aアドバイザーの選び方

大企業のM&Aを手掛けているM&Aアドバイザーは業界内で有名かもしれませんが、その知名度だけで選ばないほうがよいでしょう。理由は、中堅・中小企業のM&Aは得意ではないケースもあるからです。

中堅・中小企業の商圏は狭く、事業規模も大きくないため、大規模M&Aの原理が当てはまらないことも少なくありません。また、中堅・中小企業のM&Aでは、企業オーナーや従業員の利益を、個別に検討しなければなりません。
そのため中堅・中小企業の経営者は、M&Aアドバイザーの担当者と面談したときに、これまでの実績を確認するようにしましょう。自社と似た案件を扱ったことがあるかどうか、尋ねて下さい。

冒頭から「M&Aの流れは~~となっているので、すべてこちらにお任せください」と、大上段に構えるM&Aアドバイザーは回避したほうがよいでしょう。
フォーマットのようなものを用意して、それに無理矢理当てはめるようなM&Aアドバイザーも敬遠して下さい。

おすすめできるのは、案件ごとに特殊事情があり、オーダーメードのアドバイスが必要であることを知っているM&Aアドバイザーです。
最初にコンタクトしたときに、経営者の話をじっくり聞くM&Aアドバイザーは、「1次審査合格」としてよいでしょう。

アドバイザーの選定は簡単ではありません。
是非、当社の「M&Aアドバイザリー先選定支援サービス」もあわせてご検討下さい。

まとめ~まずはM&Aを前向きにとらえる

M&Aは、成功すれば経営者も従業員も顧客も取引先も幸せにします。日本経済にも貢献することになります。これは、売り手側にも買い手側にもいえることです。

ところが経営者のなかには、「売ることは恥」であり「買うことは手抜き」であると考える人もいます。そのような経営者にとっては、売るM&Aにも買うM&Aにもネガティブな印象を持っています。

M&Aを成功させるには、このネガティブな印象を捨てる必要があります。経済には新陳代謝が欠かせず、新しい企業が誕生し、新しい事業が拡大するには、古い企業や古い事業に費やしている経営資源を、新しい企業や新しい事業にふりわける必要があります。
企業や事業を売買することは、経済を活性化させることに貢献します。

M&Aに着手する前に、まずは経営者自身がM&Aを前向きにとらえましょう。そして、M&Aアドバイザーの知恵を借りながら、成功させる方法を選択して、一歩一歩、合併または買収を進めていって下さい。

今検討しているM&Aを成功させるためには、たとえば、自社に適した仲介会社を選んだり、デューデリジェンスに時間をかけたり、経営者同士の相性も重視する等が挙げられますが、中でも、もっとも重要なものは何かと問われれば、「可能な限り早い段階で優秀なアドバイザーに相談すること」です。

何故なら、優秀なアドバイザーは専門的な知識と経験があり、案件全体と細部を見ることができるからです。
早い段階で良い点が見えていれば、貴社のバリューアップにつながるかもしれませんし、候補先の悪い点を見定め、条件等を変更することで貴社にとってより有利な契約にすることが可能かもしれません。

早めにご相談いただくことが貴社の利益になるとお考えいただき、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。